放射性物質が体に蓄積される?

 東京にいると福島原発の話でもちきりです。
今日職場の人と話していたら、また福島原発の話になりました。
放射性物質が漏れて、海にばら撒かれたらしい。たしかに今漏れたのは薄いかもしれないけど生物濃縮されたら濃くなっちゃうんじゃないか?それに野菜とかに放射性物質がついているらしい。いくら薄くても食べて蓄積されたらやばいんじゃないの?』
と言われました。

まあたしかに不安はわからないこともないです。
話を聞いてみると以下のように考えているようでした。

1.放射性物質はどんどん体に蓄積していく
2.もし放射性物質の摂取をやめても放射性物質は体内に残ったまま

つまりグラフに描くと以下のような感じ。

60日間毎日放射し物質を摂取し、61日目(グラフの曲がっている点)で放射性物質の摂取をやめたイメージです。

でもそんなことはないので実際に計算をしてみました。
計算を簡単にするため対象にしたのはヨウ素(131I)単一核種にしました。
今回の事故でも実際に放出が観測されています。*1
ほかにも色々ヨウ素の系列は観測されていますね。
予備知識としてヨウ素(131I)の半減期は8.02070日ということを覚えておいてください。*2今回は面倒なので8日と考えます。
さて半減期が8日ということはヨウ素(131I)は8日たつと放射線を出す能力(放射能)が半分になってしまうということを意味しています。何もしなくても8日待てば自動的に放射能は半減するわけですね。この半減期は核反応炉の中とか加速器の中とか特殊な状況でなければ変わりません。もちろん生物の体内に取り込まれたくらいでも変わりません。
具体的にグラフで表すと以下のような感じ。
今回は最初の放射線強度を100としてグラフにしています。

ではこれを使って計算してみましょう。
先ほどの職場で会話した条件と同じように、毎日100単位*3放射性物質ヨウ素(131I))を60日間摂取し、その後摂取をやめたという条件です。
グラフにあらわすと以下のようになります。

どうでしょうか?
イメージどおりでしたでしょうか?
もちろん青い線のほうが実際のグラフです。
ヨウ素(131I)のような半減期の短い核種はどんどん崩壊していくため、急速に放射能は失われていきます。そのため毎日摂り続けても最初のほうにとったものがすぐに弱くなってしまって結局そんな高強度にはなりません。
 また今回はヨウ素(131I)が無制限に蓄積していくと考えましたが、そんなことはありません。海を泳ぐ魚も、畑の水を吸い込む野菜も無制限にヨウ素を取り込めるわけはないです。そのためこのグラフですら誇張しすぎです。あくまで仮想的なモデルだとお考えください。無制限にヨウ素の蓄積があってもこの程度と考えてもいいかもしれません。
 また、ただでさえヨウ素の過剰摂取が問題になっている日本人*4はそう簡単に放射性ヨウ素をとりこめません。身体に放射性ヨウ素が入り込むスキがないのです。

 なのであまり気にせず気楽にいきましょう。

 今回は理科年表のデータを使った工作でした。

追記
 今回の前提のおかしいところとして、同じ強度の放射性物質をとり続けられるという点も挙げられます。原発から継続的に放射性物質が放出され続けないとこうなりません。もし放出がなくなると一気に放射線量は低下してしまうからです。今回の原発事故は収束に向かっておりこの前提に無理があることは明らかです。
 都内の水道水に放射性ヨウ素が見つかったという報道もありますが*5、上に書いたように体に放射能が長期に残留することはありません。気楽に水道水を飲みましょう。