2011-03-25

　福島原発の事故後、東京都内に水を供給する水道水中に基準値を超えるヨウ素（131Ｉ）が検出されるというニュースが流れました*1。
　そしておそらくはその影響でペットボトル入りの水が大変売れています*2。
　
　では今後、このような放射能関連の事柄で何が起こるでしょうか？
　予測したいと思います。
　早い話が現代版『風が吹けば桶屋が儲かる』を工作します。

結論『放射能が漏れると、アボカドと納豆が売り切れる』

　今のところ注目されている放射線核種はヨウ素（特に131Ｉ）がメインです。水道水に入っていたのもこれですね。しかし以前のエントリでも書いたように131Ｉは半減期が短く、今後は放射能の弱まりからあまり注目されなくなると考えられます。*3
　そこでかわって注目されそうなのがセシウム(137Cs)です。今回の事故でも外部への漏出が確認されています*4。セシウムは物理学的半減期が30.07年と長く*5事故後も長期にわたって放射線を出し続けると考えられます。そのため今後もマスコミなどに取り上げられる機会が多いと思われます。
　取り上げられる時のあおり文句として考えられるのは『○○海域で○○Bqのセシウム137を検出。通常の○○万倍』『セシウムの半減期は３０年。生物濃縮で人体に影響？』『○○海で獲れた魚から海水の○○万倍のセシウム137を検出。生物濃縮が現実のものに』といった流れでしょうか。当然その海域で獲れた魚は売れなくなると推測されます。
　さてセシウムの恐怖があおられた結果何が起こるでしょうか？おそらくは『もう身体にセシウムが入ったかもしれないからなんとか排出しよう』とか『セシウムが入らないように予防しよう』といった動きが見られると思います。
　そのときに着目されるのがカリウムです。セシウムはカリウムと生体内での挙動が似ています*6。必須栄養素でもないセシウムは、『おそらくカリウムと間違えて生体内に取り込まれているのではないか』という推測がなされると考えられます。そのため『カリウムを大量に摂取して、セシウムの吸収を阻害しよう』という流れがおきると予想されます。イメージとしては『身体にセシウムがもう入ったなら、カリウムで押し出しちゃおう』とか『カリウムで身体を満たしてセシウムが付け入る隙を見せないようにしよう』といった感じです*7。その結果、カリウムを多く含む食品が売れると思います。その代表格が上に挙げた、アボカド、納豆です*8。アボカドも納豆もなんとなくどろどろ、ねばねばしていて、いかにも効きそうな感じもグッドです。飲み物ではビールにもカリウムが結構含まれるので、『ビール飲んでカリウムとるぞ！』とはりきる左党の出現もありえそうです。また、手っ取り早くカリウムサプリメントも売れるでしょう。カリウムはヨウ素と違い過剰摂取の害が現れにくいため、摂取を控えるような警告もあまり出ないと思われます*9。

　皆さんへの影響はどうでしょうか？
　アボカド好きや、朝は納豆派の人は警戒したほうがいいかもしれません。
　幸いなことに僕はアボカド、納豆が売り切れても大丈夫です。これらのものを摂らないと禁断症状が出るという体質ではありません。納豆はそこそこ好き、アボカドはあまり食べないといった感じです。

　さて最も重要なことは、今回の原発事故ではおそらくセシウムの害は無視しうる程度であるということです。今後セシウムの恐怖を煽る情報がもしかしたら出るかもしれませんが、そのときはどの程度の量なのかをよく見ましょう。『10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルト』*10だそうです。年間100 mSv(100ミリシーベルト)までであれば遺伝的な影響はなさそうです*11。つまり年間7,600,000ベクレル*12、*13をとってもおそらく影響はありません。また今回よりも大量のセシウムが撒き散らされたチェルノブイリ事故*14において、普通の癌の発生は増えていないという点にも注目すべきです*15、*16。
　そして半減期についてですが、セシウム137は物理的半減期こそ30年程度と比較的長いものの、生物学的半減期は70日程度と考えられています*17、*18。思ったほどセシウムは身体に蓄積されるものではありません。どれくらい蓄積されるかを計算される場合は、前のヨウ素エントリ*19をご参考にしてください。