元植物研究屋の異常な熱帯魚水槽照明選び または私は如何にしてメタルハライドランプをやめて高出力LEDを愛するようになったか
去年から熱帯魚を飼っています。
楽しいものですね。
そのせいもあって最近は熱帯魚関連のエントリも書いています。
関連エントリ:2013-08-16 - 工作blog
2012-01-31 - 工作blog
2012-02-17 - 工作blog
さて、今の飼育環境は以下の通りです。
飼育環境
水槽:コトブキ レグラスR-900L(90センチ水槽 容量157L)
フィルター:コトブキSV9000
照明:コトブキ ツインライト900リフト (32W蛍光灯×2灯)
飼育魚種:
グローライトテトラ 14匹
プラチナエンゼルフィッシュ 1匹
ハニードワーフグラミー 3匹
ブルーフィンペコルティア 1匹
オトシンクルス 3匹
ヤマトヌマエビ 20匹
要は熱帯魚屋さんで売っていた90センチ水槽のセットを買ってきて飼いはじめた感じです。
今のところ水槽やフィルターには不満を感じていないのですが、唯一照明に関しては不満です。
理由は簡単で『水草が育たない』のです。
やはり普通の蛍光灯では植物育成に不向きなようです。
というわけで照明を購入することにしました。
僕が水槽照明に求めること
僕が水槽照明に求めることは以下の3点です。
逆に僕は『照明のインテリア性』=『照明本体がカッコいいかどうか』という点はあまり気にしません。
以上の点をふまえ水槽照明を選ぶこととしました。
植物育成に適した光を出す照明とは
まず研究室で使っていた植物育成灯を思い返したところ、以下の3つを思い出しました。
1.LED照明
コインロッカーのように小さく区切られた棚一つ一つの天井に、小型LEDが埋め込まれたタイプの植物育成装置がありました。この装置では主に小型の植物や萌芽したばかりの植物を育てていました。
2.植物育成用の蛍光灯
グロスチャンバーという、電話ボックス大の箱の中に植物育成に適した波長の光を出す蛍光管を取り付けた植物育成装置がありました。この装置ではシャーレに入れた植物体や比較的大きな(といっても高さ30cmくらいまで)の植物を育てていました。
3.高圧ナトリウムランプ
人工気象室という8畳くらいの部屋をこの高圧ナトリウムランプで照明して、大量の植物を育てていました。
僕が信頼できる植物用の照明はこの三つです。そのためこの三つだけを検討しました。白熱灯などは考慮に入れません*1。
各照明装置の長所、短所
では各照明装置の長所、短所は何でしょうか。僕の認識は以下の通りです。
長所
LED照明:高効率。長寿命。複数種類のLEDを組み合わせて希望の波長を出すことができる。
植物育成用の蛍光灯:取り扱い簡単。比較的安価。照明装置が充実。いまの手持ちの装置の蛍光管を取り替えるだけということも可能。
高圧ナトリウムランプ(メタルハライドランプ):非常に高強度な光を得られる。白色度が高くきれいな光。
短所
LED照明:本体が高価。
植物育成用の蛍光灯:光量が比較的少ない。
高圧ナトリウムランプ(メタルハライドランプ):低効率=熱を発する。必ずしも植物に適した波長の光ではない
あれこれ考えたのですが、分からなかったので熱帯魚屋さんに聞いたところ『アクアリウムで人気があるのはメタルハライドランプです』とのことでした。
メタルハライドランプってどうだろうか?
たしかにメタルハライドランプを使った水槽は高強度の光でとてもきれいに見えましたし、水草も元気そうでした。太陽光のように直線的に光が降り注ぐため植物の下に影ができ、なんともいえず幻想的です。白い光も鑑賞に適しています。
しかし照明に手をかざしたところびっくりするほどの熱を感じました。触ったら火傷するんじゃないでしょうか。熱を発しているということは発光効率が低いということをあらわしています。夏に部屋でこれが光っていたらきっと暑いでしょう。
またメタルハライドランプの本体は高価で、ランプ自体も1年から2年で交換しないといけないようでした。
参考:メタルハライドランプ
【楽天市場】取寄せ商品 メタルハライドランプ ME−31501 ME−150コーラルグロウ150W散光型 50/60Hz共通 沖縄別途送料:charm 楽天市場店
残念ながらメタルハライドランプはあきらめざるをえないようです。
では植物育成用蛍光管はどうか?
植物育成用蛍光管は比較的光強度の低い装置です*2。そのため植物育成を考えると結構な本数の蛍光管とそれをはめる装置が必要です。
たとえば先ほど出た研究室のグロスチャンバーでは一つの装置で30本以上の蛍光管を使っていたと記憶しています。たしかに蛍光管自体は比較的長寿命ですが数が必要となると結構高価になります。光自体もやわらかく、影ができないので、人工的な照明感が強いです。
参考:植物育成用蛍光管
植物育成用蛍光ランプ HIDランプ、植物育成ライト 説明、販売のページ
また植物育成用蛍光管は植物の吸収波長を強調しているため、ヒトの目には若干赤いと感じられるようです*3。
簡単に言うと気に入りませんでした。
最後の望み、LED照明
そこで最後にLED照明を考えたのですが、熱帯魚屋さんにあるもので植物育成に使えるくらい強力なものとなると、びっくりするくらい高価です。
参考:マメエコライト
http://store.shopping.yahoo.co.jp/asp/md-01.html
ちょっと12万円は出せません。
しかし、考えてみると別に熱帯魚水槽用のLED照明を買う必要なんてないことに気がつきました。
単純に考えて、現状でもっとも安価に植物向けの高出力LEDを販売しているのは、『植物工場』向けの製品を作っている会社です。なぜなら植物工場では照明装置の効率と価格が損益に直接響いてくるからです。たしかにオシャレではないでしょうが、高効率なLED装置は売っているはずです。
そこでネットを探したところ、以下の会社に行き当たりました。
参考:トップテック貿易合同会社
植物用LED照明
メールで問い合わせたところ個人にもLED照明を売ってくれるようです。そのため思い切って買ってみることにしました。
高出力LED照明を買ってみた
メールで説明を聞いてみたところ、どうやらカスタマイズしたLED照明を作ってくれるみたいです。
そこで僕は以下のような高出力LED照明を発注しました。
備考:リモートコントロール可能
寿命50,000時間(僕は一日8時間照明なので計算上17年の寿命)
ちなみにこのLED照明の意図は植物育成灯の部分と、観賞用照明の部分を分けるということです。
植物の育成に適した波長の光は赤色と青色なのでどうしてもヒトに目には赤紫色に見えます。
そのためこの部分は植物育成用とあきらめ、観賞用に白色LEDを真ん中に配置し、必要に応じてリモコンで切り替えることにしました。
なおこの注文内容で価格は30,450円*4でした。安くはありませんが、メタルハライドランプに比べれば安価ですし、熱帯魚屋さんの高出力LEDよりはさらに安価です。マメエコライトは出力49Wで12万円ですので、90Wで3万円ならお買い得な気がします*5。
注文から2週間ほどで到着しましたので、早速設置しました。
水面に映った光から、設計通りのLED配列になっていることがわかります。
光は非常に強く直視できません。
植物工場用のライトなので無骨な金具です。
オシャレとは言いがたいです。
またLEDは高効率とは言っても結構熱を持つため、排熱のための大型ファンが3つ付いています。
このファンは結構強力に空気を吸い込むため、埃を防止するため換気扇用のフィルターをくっつけてみました。
残念ながらこのファンは温度に関係なく常時稼動する上に、若干うるさいです。
工場用なので仕方がないですね。
ちなみに熱帯魚屋さんで見たマメエコライトは排熱を放熱板と小型ファンで行うタイプなので音はあまりしませんでした。ここら辺が価格の違いかもしれませんね。
では次にライトをつけた後の水槽の様子です。
参考:最初に買った蛍光灯(コトブキ ツインライト900リフト (32W蛍光灯×2灯))のみを点灯した様子
以下がLED照明を点灯した様子
1.白色LEDのみを点灯した様子(出力30W)
若干青みがかった綺麗な白色光です。
光量も結構あるような気がします。
また光の直線性が高く、底に影ができます。
参考:白色LEDの場合の底
個人的には結構気に入った光です。
なかなかいいです。
2.植物育成灯部分(赤色LED・青色LED混合配列)のみの点灯(出力60W)
赤紫色なのでちょっと気持ち悪い色です。
ただ波長的には植物の育成に非常に適したものです。鑑賞には適しませんが。
紫がかった不思議な色です。
ちなみに冒頭の熱帯魚の写真はこの状態で撮影されたものです。
これはこれでいい光かと思います。