自分の持っている技術を確認してみた

 僕が今やっていることは格好よく言えばバイオテクノロジーです。おそらく、『バイオテクノロジー』という言い方が一番受けがいい。実際やっていることは特殊な料理みたいな感じだけど。で、なんで『バイオテクノロジー』の響きがよいのか考えてみた。おそらく『バイオテクノロジー』には『イノベーション』とか『最先端』みたいなイメージがあるんじゃないだろうか。うん、さらにそんな気がしてきた。でも残念なことにITみたいな『儲かる』とか『起業』みたいなイメージは薄い気がする。理由はさまざま考えられます。

・ITの開発環境(研究環境)はがんばれば学生のポケットマネーでもそろえられるくらい安い。バイオはPCR用サーマルサイクラー(パソコンで言うとキーボードくらいの位置づけ。なきゃ困るけど、ハイテクな装置ではない)すらも学生のポケットマネーでは苦しい。
ランニングコストが高い。ITなら基本的には電気とかサーバー代とかがランニングコストなのでコストが予想しやすく、管理もしやすい。バイオは試薬が異様に高い。PCRに使う酵素(耐熱DNAポリメラーゼ)は牛乳パック一本ぶん(1L)で中古マンションくらいの価格。しかも、管理が悪いと試薬は即使えなくなる。コストが予見しにくいから安全率を高くせざるを得なくて更に高価格化。
・バイオの最終製品は薬だったり、食品だったり安全を厳しく問われるものが多い。『これ面白くね?』で突っ走れない。
・サービスの場合も、『親子鑑定』だったりして一歩間違うと訴訟もの
・倫理規定が厳しい。たとえばITで活躍する『マウス』は一日中たたいてもいいし、壊れたら捨てるだけ。バイオの『マウス』は丁寧に扱わなくてはいけない。不必要にたたいちゃいけないし、麻酔で安楽に殺さないといけない。
・僕の現状認識が間違っている。

とまあこんな感じです。暗いですね。後ろ向きな事この上ない。できないことを積み重ねてもいいことはありません。そこで僕は自分の技術をどうやればサービスや財の生産に結び付けられるか考えてみた。

自分の不安を解消しよう

 僕は実験で放射能なんか使っています。『アイソトープ』っていうおしゃれな名前だけどやっぱり放射能。もしかしたら被爆するかもしれない。無精子症不妊なんてこともありうるんじゃないだろうか。実際、化学者の子どもに女の子が多いのは、弱いY染色体を持った精子が死んでるからなんていう都市伝説もあったりする。
 よし、この不安を解消しよう。元気なうちに精子を保存して不妊に備えればよいのです。

今あるサービスではだめなのか

 『そんなことくらいもうどこかでやってるだろ』ですよね。その通りです。

google:精子バンク

 しかしこの精子バンクというやつは若干ネーミングがおかしい。銀行ならお金を預けて自分で引き出すことができますが、精子バンクではそんなことはあまりしないらしい。精子バンクは預かるだけ預かって融資ばかりしています。これだと『精子バンク』というよりは『精子ライブラリ』といった感じです。図書館に本を納入した業者は図書館の本を借りることは少ないでしょうからこのネーミングのほうがすっきりします。借りる方が何種類も借りられる点も納得です。
 重要な点は、現在の精子バンクは『バンク』ではなく『ライブラリ』の性格が強いため、預ける障壁が高いことです。高学歴の人とか、お金持ちの人とかしか預けられないみたいです。小さい図書館には選ばれた『良書』しかおいてないのと似ていますね。つまり、融資する気がなく、預けたいだけの人にとって精子バンクは不向きです。

 他には精子を預かるだけのサービスとして病院がそんな感じのことをやってるみたいです。

精子冷凍保存のススメ

 抗癌剤無精子症の可能性が高い場合の措置のようです。このサービスが一般に向けても開かれているかどうかは分かりませんが、おそらくふらっと立ち寄って預けるのは難しそうです。しかもこの感じからみると病院が個別に精子を預かっている感じです。地震が来たら一発アウトでしょう。

 いいたいことは、現在の精子預かりサービスは以下の人には不向きだということです。

・危険物を扱っているが、不妊の可能性が十分に高くない人
・確実に精子をあずかって欲しい人
・不安でしかたない人。イラク派遣されそうな自衛官とか。
・格闘家でローブローをもらいがちな人。武蔵とか。

というわけでサービス概要です

 基本的に精子卵子と違って、採集が簡単かつ凍結、保存も手間いらずです。要は精液の入ったチューブを液体窒素で-197℃に保てばよいのです。そこで以下のようにサービスを実施します。

・日を開けて3回程度精液を採取し凍結保存。採取した精液は、それぞれ3本のチューブに分ける。(体調によるばらつきを抑える。精子の運動検査もこのとき)

・3回分の精液を1セットにして、3ヶ所に分散保存。(リスクの分散。できれば保存場所のひとつは海外がよい)

・精液を保存するフリーザーは鉛とコンクリートで遮蔽。(精液の劣化防止)

・定期的な採取、保存による精液の更新(精液の品質維持)

 これで安心して精子を預けられますね。サービスの規模によりますがおそらく保存費用は年間10万円くらいではないでしょうか。
 
 どうですか?預けたくなってきたでしょう?簡単で初期費用も(バイオにしては)少ないビジネスです。どうだい。やってみないか?10年後くらいの自分よ。

 このサービスができたら陸自の友達に勧めてみようと思っています。


追伸 ようは現在ある『精子バンク』というサービスの名前が気に食わないだけです。