『地域円』という微生物と『自由円』という象


 あいかわらず『レジデント初期研修用資料』はすごい。僕はここをみてはてなにブログを書きはじめたくらいです。

 2008年01月25日のエントリー。地域貨幣を導入したら貨幣の多様性がまして世の中うまくいくんじゃないかっていう話。

 おそらくこの方法はうまいやり方。

 なんでうまいのか生物学的に考えた。

『地域円』という微生物と『自由円』という象

 象と微生物はどちらが優れた生物か?

 答えはおそらく『どちらも同じくらい優秀な生物』。なぜなら今生きているということは淘汰圧に負けなかったということだから。環境に対して負けなかったということはそれだけでその生物種の優秀さを証明する。(象も微生物も単一の種じゃないけど)

 おそらく貨幣も同じことだと思う。『地域円』も『自由円』も同じくらい優秀なはず。貨幣統合の流れは大きいけど、いまだにローカルな地域でのみ流通する貨幣は多いし。


 問題なのは現在の『肉の量』。1個体で比べたら象と微生物の『肉の量』の差なんて歴然。微生物が勝てる余地なんて絶対無い。『おらがまち通貨』単独ではどこまでいっても『自由円』に肉の量では勝てないと思う。
 でもいろいろな『おらがまち通貨』が群れれば肉の量も『自由円』に近付けるはず。


 象はその移動力を使って広大な地域を歩く。その過程で大量の草を食べエネルギーを得る。象を殺せる存在なんてほとんどいないからやりたい放題。微生物が道の途中にいたら問題なく踏み潰せる。

 『自由円』は象。日本どころか世界中を動き回れる移動力を持っている。移動力があるから大量の資産を取り込めるし、それを元手にさらに広大な地域を動くからさらに『肉の量』は大きくなる。良循環。『地域円』があったって潰そうと思えばいつだって潰せるし、そもそも相手にもならない。

 移動力も高いし、『肉の量』も多いし、資産取り込み効率も高い『自由円』。大昔からみんなで寄り集まって『自由円』を作ってきた。その流れは止めがたくて必然だから、もちろんヨーロッパでも起こってユーロができた。

「ヨーロッパは通貨統合して豊かになったよね?」と突っ込まれたけれど、たしかにそのとおりで、反論できなかった。

http://medt00lz.s59.xrea.com/blog/archives/2008/01/post_592.html

『マルク』や『リラ』みたいな微生物が寄り集まって『ユーロ』という象になった。微生物の時も象の時も『肉の量』自体は大差ないはず。すくなくとも100倍は違わない。そのかわり象になったおかげユーロの移動力はまして、効率は高くなった。

『通貨統合で豊かになった』

これは紛れもない真実だと思う。じゃあみんな通貨統合して『世界通貨』ができてみんなハッピーになるんだろうか?


 たぶんそうはならない。


 象の『自由円』に比べて『地域円』は微生物。移動力で比べたら微生物は絶対象に勝てない。微生物の移動なんて一生かかってもせいぜい体長の数百倍程度のものだと思う。象ならそんな距離一時間で移動できる。同じように『地域円』はどうやっても移動力で『自由円』に勝てない。移動力もないから取り込み効率も悪い。悪循環。

 微生物は増殖力を高くできるから『肉の量』自体はなんとかなるはず。問題は取り込み効率が低すぎること。なにか微生物が有利な点はないんだろうか?

微生物が象にたいして圧倒的な優位に立つのは『分散性』

 象は銃弾一発打ち込まれれば倒れる。でも同じ肉の量をもつ微生物の群れに銃弾打ち込んでも死ぬ微生物量なんて誤差の範囲。微生物の群れは統合されてないから弱点がない。
 『サブプライムローン』なんていう銃弾は『ドル象』にかなりダメージを与えたと思うけど、これが地域通貨の群れだったらダメージは限定的だったはず。 

 加えて微生物は環境の変化に強い。象は常に食べていないとその巨体を支えられないけど、微生物なら数週間の休眠なんて楽勝。為替とか株式市場が常に開いているなんていう状態は象のためのもの。今の状態で『今日から株式市場と為替市場、先物市場を一週間閉鎖します』なんていったら死刑宣告だけど、地域貨幣主体の世界ならおそらく『そんなこともあるよね』の一言。


 これからの世界は変化するか、変化しないか。


 こう聞かれたら全員が『変化する』っていうと思う。何人かは『激変だよ』なんていうかも。

 でも本当に激変すると思うなら、フラット化とか統合とかはむしろおかしい。

 たしかに象は大きな体と移動力のおかげで、火事とか洪水とかからは簡単に逃げ出せる。洪水に出くわした微生物になすすべはない。

 でも、氷河期到来くらいの大変化に象はついていけない。草を絶たれてあっさり絶滅すると思う。生き残るのは微生物。
 
 

通貨の統合とか、「一つの世界」みたいな理想論は、何だかどこかいかがわしい。

http://medt00lz.s59.xrea.com/blog/archives/2008/01/post_592.html

 本当にそう思う。『一つの世界』なんて『象だけが生きる理想郷。汚い微生物は一掃しました』といっているようなもの。多様性をなくした世界は、おそらく大変化で肉の一片も残さずあっさり絶滅すると思う。

 だからとるべき道は『自由円』と『地域円』の混在なのだと思う。

 小さい変化は象たる『自由円』で乗り切って、大変化は微生物たる『地域円』で乗り切る。

 みんながそうすれば史上かつてないほど強い『市場』がつくれると思う。