僕がベーシックインカムに賛成する理由
ぼくはベーシックインカムという考えに賛成しています。
ベーシックインカムについては以下をご覧ください。
ベーシックインカム - Wikipedia
ようは生活保護のようなものですが、まったく異なる点があります。
1.社会を構成する全員に給付する
2.審査なしで給付する
という点が生活保護と異なります。
僕はこの話をはじめて聞いた時、狂気の沙汰だと思いました。
だってこんなことしたらだれが働くっていうんですか!
しかし、じっくり考えてみるとこのベーシックインカムはうまい考え方だと思えてきました。今回はなんでベーシックインカムがうまい考えであるかを書いてみようと思います。
『多細胞生物』=『専門家集団』をささえる血流
現在の社会*1は、多数の専門化した人間がその専門性を発揮して働く社会です。*2プログラマーはコードを書く能力に特化してその能力を発揮し、生物学研究者は遺伝子をいじくる能力に特化してその能力を発揮しています。そして一度その分野に特化するとほかの分野に移動することはあまりありません。
全体としてみると現代人は社会の中で分化しているといえます。ちょうどヒトという多細胞生物のなかで細胞が分化していくようにです。
万能である受精卵は成長に伴って分裂し、さまざまな細胞へと変化していきます。脳細胞は脳細胞に、骨格筋細胞は骨格筋細胞に分化して機能を果たします。そして一度分化すると他の細胞になることはほとんどありません。
重要な点は、『分化には犠牲が伴う』ということです。例えば脳細胞になった細胞はエネルギー源としてブドウ糖*3しか使えないようになります。また精子などを除く大部分の細胞は自律運動能をもちません。多細胞生物の細胞を一つだけ取り出して『自力で生活しろ』といっても無理です。
もちろん犠牲を払うからには見返りもあります。分化した細胞は相互に協力し『多細胞生物』になることで全体としては高い生産性を誇ります。60kgのヒト(分化した細胞が寄り集まった多細胞生物)と60kg分の大腸菌の塊(未分化細胞の無秩序な群れ)を比べると分かりますが、ヒトのほうが圧倒的に高い移動力、探索能力、推論能力を持っています。
細胞分化に必要なものが『血流』です。血液のなかには栄養も酸素も含まれており、そこから分化細胞は生存に十分な資源を得ることができます。血流から栄養を得られるため脳細胞や骨格筋細胞は自力でえさを探す必要はなく自身の専門化した能力を発揮することに集中できます。もし血流がとまれば脳細胞など数分で死滅です。
おなじようなことが現代社会にも言えるのではないでしょうか?専門化には犠牲が伴いますが、専門化したほうが効率がよい。社会という多細胞生物の『血流』としてベーシックインカムを使えば専門化した個人は能力発揮に集中できます。収入が保証されているオープンソースプログラマは安心してコードに没頭できるでしょうし、収入が保証されているポスドクは安心してピペットマンを握れるでしょう。
ここで聞こえてきそうなのが『働かざるもの食うべからず』という言葉です。
しかし上のたとえを使うとこの言葉は簡単に間違いだと分かります。
『睡眠中に太ももの筋肉細胞は働いてないのだから血流を止めるべき』
などというヒトはおそらく睡眠後に立ち上がれません。血流はつねにあまねく全身に流していなくてはならないのです。たとえ今は『サボっている』ように見えても次の瞬間には必要になるかもしれません。もちろん盲腸のように役に立たない細胞もあるかもしれませんが、その無駄を補ってなお余りあるほど『分化による高効率化』には力があります。*4
結論としては、高度に分化した高効率、高生産性社会を目指すためにはベーシックインカムのような『血流』を実現する必要があるということです。