久しぶりに『象』がつかまったよ!
久しぶりに『象』がつかまったようです。象とは言っても生き物のことではありません。このエントリーで言う『象』は10億バレル以上の原油をたたえた大規模油田のことです。
しかも今回つかまったのはかなり大きい象のようです。
ブラジルで海底油田発見、埋蔵量は330億バレル? 写真7枚 国際ニュース:AFPBB News
330億バレルだとだいたい世界消費量の一年分です。
これをみると『また油田発見?やっぱ石油は尽きないんだよ。バイオマスとかクリーンエネルギーとか馬鹿みたい』ってことになりそうな気がするので少し書いておこうと思いたちました。
昔は象がいっぱいいました。中東では毎年のように象が見つかっていたので1960年代には300億バレル/年くらい油田が見つかっていました。しかし最近は象が見つかりにくくなっていて60億バレル/年くらいの発見率になっています。象は一匹もいなくて数億バレルの油田だけしか見つからない年も多かったようです。
なので今回の象捕獲はとても大きなことです。5年分の発見をたった一つの象で実現したのですから。
しかし残念ながら今回の象は昔の象とはちょっと毛色が違うようです。そしてこの毛色の違いが決定的です。
今回の象は海底の相当深いところにいます。海面下1000mから3000mといったところです。海底油田で有名な北海油田は大陸棚から掘れるので数百mの水深であることを考えると相当な大深度ということになります。
で、この大深度から石油を採るために相当な投資が必要なようです*1。
昔の象は砂漠のど真ん中にいて穴をあければ勝手に原油が噴出してきました。ただみたいな手間で原油がくみ出せたのです。でも今回の象ではそうはいきません。相当な手間をかけて大深度から原油をくみ出さないといけません。当然この手間はコストとして原油価格に反映されます。そして地質学調査の発展を考えると今後もおそらく浅い場所で象が捕まることはないでしょう。
バイオマス活用だとかクリーンエネルギーだとかを推進しないといけない理由はここです。石油はここ数年間ずっと価格競争力を失い続けています。対して風力や潮力、地熱、植林によるバイオマスなどのコストは変わっていないか、下がっているので価格競争力は相対的に上がっています。
石油が『尽きる』ことはおそらく今後半世紀はないでしょう。しかし、今ある価格の石油はもう手に入らないでしょう*2。なのでこのまま石油だけに頼ると高いコストを払わないといけないことになります。だから少しずつでもエネルギー源を脱石油化しないといけないのです。
追記 『象』に関するおすすめ書籍
- 作者: ピーター・ターツァキアン,東方雅美,渡部典子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2006/12/15
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (14件) を見る