『格言』
「なあ『満足した豚より不満足なソクラテスであるほうがよい』ってことばがあるよな?」
「ん?たしかにあるね。その言葉がどうかしたの?」
「いやちょっと気になってな。ここでいう豚って『欲望の塊』の代表だろ?いいもの食って、ゴロゴロするみたいな」
「そうだね。ソクラテスと対比されてるし禁欲っぽい感じはしないな。」
「だろ?とうことは豚は欲望にまみれていなくちゃいけないんだ。いいもの食いたいって常に思ってなくちゃいけない。だから満足した豚はもう豚じゃない。逆にソクラテスは不満足らしい。きっと何かが欲しいんだろう。ということはむしろソクラテスのほうが豚っぽいんじゃないか?」
「いわれてみればそうだね。ソクラテスは豚だ。でもってぼくたちは豚を目指したほうがいいんだろうね。きっと」
「そうだな。きっと豚を目指さなきゃいけない」
「関係ないけど『小人閑居して不善を為す』って言葉もあるよね。でもこの言葉も実際は何にも言ってないように思う。暇してる人でも立派なことをしたらきっと小人なんていわれない。悪いことをした人間がたまたま暇そうだったら、したり顔で『小人閑居して不善を為す』言うんだと思う。要は結果論だね」
「たしかにそうかもな。どのみち豚を目指せば問題なさそうだ」