小飼弾氏はカーボンオフセット取引対象になるかも

 最近地球温暖化についての議論がされています。

 いまのところ地球温暖化は人為的なものであり、その犯人は二酸化炭素であるということになっています。*1二酸化炭素=悪人みたいな構図が良くみられます。

 では二酸化炭素はなぜ悪者になってしまったんでしょうか?みんな息とともに二酸化炭素を吐き出しているのに。


 今一番もっともらしい考え方はこうです。

 生態系は炭素循環を行っており、二酸化炭素はその循環をになう物質のひとつです。炭素循環というのは生き物と環境の間の炭素のやり取りのことです。大雑把にいうと、大気中の炭素(二酸化炭素)が植物に取り込まれ、生体を作る材料として利用される→それを動物が食べるため炭素は動物に取り込まれる→その際呼吸を行ったり、死んだりするので炭素は再び大気中に放出される→放出された炭素は再び植物に取り込まれるといった一連の流れのことです。
 そして大気中に放出される炭素はたいてい二酸化炭素という形を取ります。*2
 問題はここからです。そのむかし、二酸化炭素は生き物と大気の間をいったり来たりしているだけでした。いったり来たりするだけなので炭素の総量は変化しません。もちろん炭素の循環から外れるものもありました。たとえば生き物の死骸の一部が地中に埋められてしまうという事態もありました。これは今、石油と呼ばれるものになっています。石油は少しずつ、ゆっくりとできたため炭素循環にはさほど影響を与えませんでした。
 しかし石油を掘り起こして使うようになると、地中に埋もれていた炭素が急に大気中に放出されるようになりました。炭素は循環するので、放出された炭素を全部取り込めれば問題ないのですが、二酸化炭素を取り込む生物の量(生体量)は急に変わりません。そうすると二酸化炭素は取り込まれないのでだぶついて大気中に漂うことになります。大気中に二酸化炭素が漂っていると熱放射が妨げられるので地球が温暖化するというわけです。最近悪人扱いされるのはこのだぶついた二酸化炭素なんですね。

 なのでこのだぶついた二酸化炭素をなんとか捕まえて固定しなくてはならないという流れになっています。たしかに石油由来の炭素と同じだけの量を取り込んでどこかに固定できれば、石油使用前と同じ環境に戻るはずです。この固定の方法をいろいろ考えるのが『温暖化対策』というやつです。

 そしてカーボンオフセットという考え方はこの様な状況の中で出てきた指針の一つです。『とりあえず二酸化炭素減らせとか、出すなとかはいわない。ただ出した二酸化炭素はちゃんと回収しろよ』という行動指針のことです。
 二酸化炭素を出した組織が、出した二酸化炭素分に相当する木を植えるというのがカーボンオフセットの一例です。
 
 さて、このカーボンオフセットの方法なのですが、いろいろなことが考えられます。ようは二酸化炭素を取り込んで大気中に放出されないように固定できればなんでもよいのです。
 たとえば工場から出た二酸化炭素を集めて空になった油田に埋め戻すという方法や、サンゴをそだてて二酸化炭素を取り込ませるといった方法が実際にあるようです。
 でも二酸化炭素固定方法はそれだけではないはずです。
 例えば紙は木という生き物からできているため、立派に炭素を固定しています。

そう。

紙を大量に保持するということは、それだけで二酸化炭素を固定しているということになるです。

ここでid:dankogai氏の登場です。*3彼は非常に蔵書が多い方のようで20000冊以上本を持っているようです。ざっと計算したところ、新書一冊で260g程度の二酸化炭素相当分を固定していますから、彼の蔵書が全部新書だとしても5t以上の二酸化炭素相当分を固定していることになります。*4さらに本棚が木製のものなら、さらに多くの二酸化炭素を固定していることになります。
 しかも彼は書評をして本を売っているため、着実に顧客の本棚に二酸化炭素を固定していっています。もはや植林と同じですね。

 といったわけで、彼と彼のライフスタイルがカーボンオフセットの対象になると思うのです。二酸化炭素排出権を購入しようとしている方はぜひ考えてみてはどうでしょうか?
 あとid:dankogai氏はいやかもしれませんが、ハードカバーの重い本を集中的に書評するとオフセット効果が更に上がると思います。

*1:二酸化炭素が犯人なの?とかそもそも温暖化は人為的なものじゃないだろ、とかいった話は今回スルーします

*2:メタンのような形で存在することもあります

*3:僕の中では本をたくさん持っている個人の代表です

*4:新書一冊が180g程度。含水率10%だとすると絶乾重量162g程度。これが純粋なセルロース(モノマー分子量162)だと仮定するとちょうど1 mol。1 molセルロースから6 mol二酸化炭素(分子量44)が発生するため新書一冊あたり264g。264g×20000冊で5.28t。