死ぬな!勝ち誇れ適者!

死ぬな!

また『もう死のう…』とか考えただろ!

死ぬな!

もう一度繰り返す。

死ぬな!


お前の考えをあててやろう。

また『適者生存』って考え方が頭から離れないんだろ?

『適者だけが生き残る価値がある。働かざるもの食うべからず』とか考えてるんだろ?

『自分はだめなやつだ。適者じゃない。生きるに値しない。もう死のう』なんて考えが頭から離れないんだろ?


お前に一言言っておきたい。適者の定義だ。

簡単だから一言ですむ。それは


『たった今生きているかどうか』

だ。


たった今生きてこの文を読んでいるなら、お前は適者だ。

すでに地球上に現れた種の99%以上は絶滅した。

適者でなかったからだ。

しかし、お前は今生きている。

なぜなら適者だからだ。


実際のところ『適者生存』はトートロジーだ。

『適者が生き残る。
じゃあ適者って何?
それは生き残ったやつのことだ』

こんな下手なジョークに過ぎない。


たしかにお前は今、自分が適者であるなんて思えないかもしれない。

他人と比べて自分の欠点ばかりに目がいくかもしれない。

コミュニケーションが取れないかもしれない。

部屋から出ることもできないかもしれない。

もう自分は社会不適合者で死ぬしかないと思っているかもしれない。


しかし、お前は適者だ。

なぜなら今生きているからだ。

適者に必須なものはたった一つ。

生きているという事実だけだ。

適者であるのにコミュニケーション能力が高いとか、身体能力が高いとか、語学力に秀でるとか、そんなことは一切関係ない。


ミオスタチン関連筋肉肥大症の人の話をしよう。

ミオスタチンという因子が生産されない、あるいは受容がうまくいかないと筋肉は過度に成長する。極めて頑丈な身体になり、いわゆる『超人』といわれる状態になる。おそらく常人では体力で彼らに絶対勝てない。

しかし、そのかわり彼らは常に食べていなければならない。過剰な筋肉が消費する膨大なエネルギーを常に供給しなければならない。
そうしないとあっという間にエネルギー切れになるのだ。

彼らは食料の乏しい時代に生まれたら生き残れない。

強すぎる身体は適応力を下げる。



あらゆる能力には『ほどほどな状態』が存在する。

持っていれば絶対に有利といえる能力は存在しない。

強すぎる身体は生存に不利だ。

そしてどの能力がどの程度であれば、ほどほどであるかは環境が決める。

いや、環境しかほどほどを決められない。

どれだけ食糧を供給できるかという環境が、維持可能な身体の大きさを決める。

もっとも明確な基準で決める。

それは死だ。食料が足らなければそのまま死が訪れる。

だから繰り返す。

『今生きていれば適者』

環境は変化し続ける。

食糧供給が潤沢な現代の先進国ならミオスタチン関連筋肉肥大症は今後有利な能力になるだろう。

昔であれば死を呼ぶだけの能力だったかもしれないのに。

環境は変化し続ける。

今後の変化によっては今は不利としか思えない能力が有利なものになるかもしれない。

それは今は『怠惰』とか『コミュニケーション能力不足』とか『社会不適合』といった能力かもしれない。

能力に貴賎はないのだ。たとえそれが能力とは思えないとしても今生きているならそれは能力になりうる。

だから生きろ。

お前は今日を生き残った。

適者だからだ。

そしてお前は昨日よりも強い。

今日一日、淘汰圧をはねのけたのだから。

お前は適者だ。

生きている限りずっと適者だ。

だから死ぬな!勝ち誇れ適者!